■2023年度各会計予算額

23年度予算額

22年度予算額

比較増減

増減率

一般会計

1兆1,922億円  

1兆1,616億円  

306億円  

2.6%  

特別会計

3,840億円  

94億円

306億円  

2.5%  

企業会計

2,732億円  

2,688億円

44億円  

1.7%  

総  計

1兆8,495億円  

1兆8,050億円

445億円  

2.5%  

2023年度札幌市予算案

【一般会計1兆1922億円】

秋元市長「市民生活をしっかり支える」

 秋元克広市長は1月30日、臨時記者会見を開き、2023年度当初予算案を発表した。一般会計の予算額は前年度当初比2・6%増の1兆1922億円。統一地方選挙(4月9日投開票)を控えるため、義務的経費中心の「骨格予算」となるが、物価高騰や新型コロナウイルス感染症対策を重視し、過去最大の予算規模となった。23年度予算は、同時に発表した22年度補正予算と一体の「16カ月予算」として編成し、当初と補正を合わせた一般会計の予算規模は1兆2117億円。選挙後の補正(肉付)予算の財源として地方交付税を30億円留保した。秋元市長は会見で「市民生活をしっかりと支える予算にした」と述べた。特別会計と企業会計を加えた全会計の当初予算総額は1兆8495億円。補正予算案と合わせ、13日開会の第1回定例市議会に提出した。

【健全な財政運営を堅持】

 歳入の柱となる市税収入は前年度比3・0%増の3501億円。個人市民税の増収に加え、法人市民税と固定資産税の増額を見込んだ。市の貯金にあたる財政調整基金は93億円活用し、23年度末の残高は136億円。中期計画「アクションプラン2019」で想定していた基金残高「100億円」を上回る水準を維持できる見通し。
 市債の発行額は、地方の財源不足を補填するため、自治体が特例として発行している臨時財政対策債を含め4・2%減の919億円。23年度末の一般会計の市債残高は1兆1456億円と、プラン2019策定時の想定(1兆2288億円)を下回る見込みとなっており、秋元市長は「市政課題にしっかりと対処しつつも、将来世代に過度の負担を残さない健全な財政運営を堅持できた」との認識を示した。
 歳出では、3割を占める扶助費が新型コロナへの対応や障がい福祉費が増え1・5%増の3598億円。建設費については、市有建築物の計画的更新や都市のリニューアルのため、27・8%増の1335億円を計上した。駒岡清掃工場の更新に加え、札幌駅交流拠点関連や中央区複合庁舎の整備を進める。

予算案に計上された予算案に計上された主な事業

【物価高騰・新型コロナ対策】

物価高騰対策として、市内の小売店や飲食店など約9千店舗で使えるプレミアム付き商品券の発行に22億円を充てた。1冊5千円分(500円券×10枚)の商品券を4千円で販売。150万冊発行する。
 また、中小企業向けの資金貸し付けに955億4100万円を確保し、事業再構築や売り上げの減少に対応する融資を継続するとともに、再エネ・省エネ設備の導入を支援する融資制度を創設する。このほか、落ち込んだ観光需要の回復を目的とした体験型コンテンツの造成支援に1億8600万円を盛り込んだ。
 新型コロナ対策では、9月までの接種を想定したワクチン接種費用として197億2600万円を確保。また、検査や陽性患者の搬送、自宅療養者に対する食料品や日用品の配送などに187億4300万円を配分し、秋元市長は「市民の命と暮らしを守るための相談・検査・医療提供体制を引き続き確保する」と力を込めた。

【子ども・子育て支援】

 出産・子育て応援に17億5500万円を計上し、妊娠・出産時にそれぞれ5万円を支給する。
児童虐待を未然に防ぐため、1億3800万円を充て、虐待通告や養護相談の増大に対応するための電話相談を実施するほか、SNSを通じた相談体制を整備。また、送迎バスでの子どもの置き去りを防止する安全装置の導入支援などに6億5200万円を盛り込んだ。
 「学び・育ちの環境整備」では、学校の改築に合わせて行う児童会館の整備や老朽館の更新に7億6900万円を配分。市内の児童クラブで夏と冬休みの期間中、1食350円で昼食を提供する事業費は870万円とし、館数を拡大(夏期120館、冬期140館)して実施する。
 保育所などの整備関連は19億4600万円。認定こども園の新・増築や移行、私立保育所の整備を補助し、定員を410人分増やす。内訳は私立保育所240人、認定こども園170人。

【町内会支援・暮らし・福祉】

 町内会活動への支援は8億2800万円。4月1日から施行される「未来へつなぐ町内会ささえあい条例」の趣旨を踏まえ、単位町内会に交付する住民組織助成金を1世帯当たり130円から260円に倍増、連合町内会は同100円から120円に引き上げる。また財政基盤の強化として、広報さっぽろの配布謝礼金を1部当たり13円から15円に拡充し、集団資源回収の奨励金についても1㌔当たり3円から4円に増額。パートナーシップ排雪の地域支払額については当面据え置きを実施する。
 降雪状況に応じた機動的な除排雪を行うため、除雪費は前年度当初予算から約46億円増額し、過去最大となる261億5700万円を確保した。積雪深が50㌢に達するなど、大雪が見込まれる場合、道路脇の雪山を全て排雪するほか、雪堆積場を75カ所から80カ所に増設し、大雪時でも市民生活への影響を最小限にとどめる。
 救急医療の体制強化に19億8千万円を充てる。救急患者をより迅速に搬送するため、病床の空き状況や受け入れ候補となる医療機関の一覧をリアルタイムで表示するシステムを構築するほか、医療機関への傷病者情報の適時伝達を可能とする救急隊アプリを導入する。
 福祉に関する困りごとを複合的に抱える市民に必要な支援が行き届くよう、市は22年度に支援調整を担う組織を北区と東区に新設。23年度は実施区を4つの区に拡大し、関連費用として2200万円を計上した。
 各種施設のバリアフリー化関連は51億7800万円。地下鉄駅のエレベーター設置や公園トイレのユニバーサルデザイン化、歩道バリアフリー化などを進める。

【経済・まちづくり・脱炭素】

定山渓地区の魅力アップに向け、2億円を配分し、宿泊施設の緑化や外観の修繕に伴う経費を補助。体験型コンテンツの充実や造成する取り組みに対しても補助金を交付するとともに、足湯施設を新設する。
2024年冬季に開かれる芸術の祭典「札幌国際芸術祭(SIAF)」の準備に5億1800万円を盛り込んだ。SIAF2024の会期は24年1月20日~2月25日の37日間。冬の札幌の特色を生かした独自性のある芸術祭の実現を目指す。
 9月に開かれる体験型観光の国際会議「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)」の開催経費とコンテンツの充実に向けた支援に3300万円を計上し、「開催を通じて、札幌の魅力を国内外に発信する」(秋元市長)。
企業立地の促進に10億4千万円を措置。首都圏に対するプロモーション活動や、IT・コンテンツ・バイオ技術を活用して研究・開発等を行う事業所を新・増設する企業に対し賃料を2年相当分補助する。
 「デジタルを活用した行政サービスの向上」として、市税の口座振替に関するオンライン化を推進するため900万円を計上した。インターネットでの受け付けを10月から開始する。また、大型ごみの収集申し込みのインターネット受け付けと、ネットで申し込みをした市民向けに処理手数料の電子決済サービスを11月から導入、8300万円を確保した。議会のペーパーレス化とICT化を推進するためのタブレット端末の導入は1500万円とし、議員1人につき1台のタブレット端末を貸与する。
 東京大会をめぐる汚職・談合事件を受け、「積極的な機運醸成活動を当面休止する」としていた冬季オリンピック・パラリンピック招致関連は前年度から約8割減の6900万円。国際会議でのプレゼンテーションやイベントブース出展などの予算は計上せず、大会運営の透明性・公平性の確保に向けた組織委員会の在り方など開催計画の詳細を検討する。
 札幌駅交流拠点関連の予算額は103億6400万円。北5西1・西2地区の再開発に伴う土地開発基金地の買い戻しや、北5西1地区と北5東1地区を結ぶ創成川上空の歩行者動線の検討に加え、新幹線札幌駅東改札口の実施設計に入る。
 ゼロカーボンシティの実現に向けては、札幌市内で開かれる「G7気候・エネルギー・環境大臣会合」を契機とした「環境首都・札幌」の取り組みを発信するための事業として700万円、環境関連分野の新製品・新技術の研究開発を行う中小企業を対象とした補助金の創設に8200万円、市立学校の省エネ化に向けた照明器具のLED化改修に1億6600万円を措置した。

主な事業

当初予算額

1定補正予算額

  プレミアム商品券の発行

22億円

  中小企業金融対策資金貸付

955億4,100万円

  公共交通ネットワーク確保対策

16億1,900万円

  新型コロナワクチン接種

197億2,600万円

  新型コロナ感染症患者等対策

187億4,300万円

  出産・子育て応援推進

17億5,500万円

  保育所等整備関連(定員増410人)

19億4,600万円

  老朽校の改築や学校のバリアフリー化

69億8,700万円

113億9,800万円

  町内会活動の支援と財政基盤強化

8億2,800万円

  除雪費

261億5,700万円

  障がい児者入所施設の老朽化対策補助

3億5,800万円

  札幌国際芸術祭2024

5億1,800万円

  企業立地の促進

10億4,000万円

  定山渓地区の魅力アップ

2億円

  冬季オリンピック・パラリンピック招致

6,900万円

  札幌駅交流拠点関連

103億6,400万円

  学校施設の照明器具LED化改修

1億6,600万円

職員定数・機構編成

【戦略ビジョンの推進体制を確立】

 同日の記者会見で、秋元市長は4月1日付の職員定数・機構編成を発表した。2031年度までのまちづくりの基本指針「第2次まちづくり戦略ビジョン」の推進体制を確立するため、「ユニバーサル推進室」をまちづくり政策局に新設し、バリアフリー施策を一体的に推進。また、保健所に「ウェルネス推進担当部」を整備し、健康寿命延伸に向けた施策を進める。
 新型コロナウイルス感染症対策を行う保健所医療対策室の体制については、業務の見直しを通じて配置人員を整理しつつも、感染症の対応に必要な体制を確保。秋元市長は「5類への移行の動きを注視し、適宜、体制の見直しを行う予定」と述べた。
 このほか、教職員を84人増員し、少人数学級の拡大や特別支援学級の児童生徒数の増加に対応。児童相談所に児童心理司を10人増やし体制を強化する。
 2023年度の職員定数は31人増の2万2415人。