札幌市議会第3回定例会
代表質問雪
札幌市議会第3回定例会は9月28日から3日間、代表質問を行いました。市債残高の適正な管理と各種基金の活用によるバランスの取れた財政運営が必要と指摘したのに対し、 秋元市長は、次期戦略ビジョンを見据えながら既存事業を見直すとした上で、「公共施設の更新需要に対しては、事業量の平準化を進める」と表明。市債や基金残高の適切な水準に留意しつつ、税源のかん養に寄与するまちづくりを推進し財政基盤の強化を図ることで、「バランスの取れた持続可能な財政運営を堅持する」と答えた。恩村市議への答弁。
市長の政治姿勢
【長引く物価高騰に対応】
低所得世帯などへ独自支援
長引く物価高騰等への対応を求める質問に対し、秋元市長は、所得に対する生活必需品の支出割合が大きい低所得世帯や、価格への反映が難しい事業者に特に大きな影響を与えていると説明。札幌市の消費者物価指数の上昇幅が全国と比較しても大きい傾向にあるといった地域特性も踏まえ、「低所得世帯などに対する独自支援を行う必要がある」との認識を示した。
【クリーンな大会を】
東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件を受け、日本オリンピック委員会(JOC)の山下会長と秋元市長による「クリーンな大会に向けた共同宣言」が行われたものの、「失墜した大会のイメージを回復するのは容易ではない」と指摘。市長は「招致活動への影響が懸念される」との認識を示した上で、JOCや関係機関と連携し、あらゆる機会をとらえ、クリーンな大会を実現するという姿勢を積極的に発信すると述べた。
【大雪への対応】
昨冬の大雪に対する議会議論を反映し、「大雪の対策費は当初予算で計上することが望ましい」と提案した。定例会の初日(9月21日)、積雪深が50センチに達した、または達することが見込まれる場合の「フェーズ1」対策費を盛り込んだ補正予算案が上程された。
市長は、23年度以降の予算編成で、初冬期の大雪への対応を当初から一定程度想定し、予算化すると表明。雪堆積場の郊外化や除雪従事者の不足といった課題も抱えているとし、「今後も社会環境の変化を踏まえた雪対策の在り方を議論し、取り組みを加速させたい」とした。
市職員の人材確保
20政令市中18位
「職員数をしっかり確保」
少子高齢化や複雑・多様化する福祉課題への対応など、行政ニーズが高まる中、「専門人材の確保をはじめ、人的資源、マンパワーが必要」と提言。町田副市長は「専門人材を含め、必要な職員数をしっかり確保する」と答弁した。
感染症対応や福祉に関連して若干の増員が実施されたとはいえ、行財政改革、業務効率化で職員数が削減された結果、人口10万人当たりの一般行政部門の本市職員数は377.2人。20ある政令市の中で18位、政令市の平均457.6人と比較しても相当少ない状況となっている。
「職員力、すなわち自ら考え行動する力や働く意欲をいかに高めていくかが重要」と強調。職員力向上のための人材育成と環境整備に取り組むよう求めたのに対し、市職員人材育成基本方針の見直しを進め、具体的な取り組みを検討すると答えた。
今後の保育施策
「地域間の差」解消を
計画の中間見直しで整理
地域によっては当初想定されていた保護者ニーズよりも実際の保育施設利用者数が少なかったり、保育士が不足し定員割れを起こしている施設もあるなど、地域間で差が表れ始めていると指摘。保育施設の新設を主とした従来の施策から、地域間の差を解消していくための施策に転換していくことを考え始める時期と述べ、考えをただした。
町田副市長は、市全体として保育の供給量は確保されたものの、一部の地域で不足が生じているとし、「子ども・子育て支援事業計画」の中間見直しで整理する考えを示した。
保育所等は子どもの人数に応じて収入が増減するため、定員割れを起こす施設に対し定員の増減を行うことが必要と提言。これに対し、保育需要の減少局面を見据え、検討を進めるべき課題との認識を示した。
観光振興の方向性
観光施策の拡充図る
世界から選ばれる観光地に
「札幌の経済成長をけん引する観光の復活が極めて重要」と述べ、今後の観光振興の方向性について質問。石川副市長は「関係者が戦略的に観光振興に取り組めるよう推進体制を強化し、観光施策のさらなる拡充を図る」と答弁した。
コロナ禍の影響を受け、18年度をピークに札幌を訪れる観光客数は大きく減少し、21年度の観光客数は789万人、観光消費額は2183億円。本年度を最終年度とする観光まちづくりプランの22年度目標「年間来客数1,800万人」「観光消費額7千億円」の達成が難しい状況となっている。
人口減少期を迎え、市内消費の減少が懸念される中、石川副市長は「域外からの経済的波及効果をもたらす観光の重要性はさらに高まる」と説明。次期プランの計画期間中(23~32年度)には、新幹線札幌延伸や都心部の再開発、招致を進めている30年冬季オリンピック・パラリンピック大会など、「千載一遇の機会がある」とし、世界から選ばれる観光地づくりを目指すと答えた。
公共交通利用の促進に向けた都心部のまちづくり
自家用車からの転換
官民連携で交通環境を創出
北海道新幹線札幌開業を見据えた都心部の再開発に伴い、自家用車の乗り入れ抑制など、交通流入対策の必要性が指摘されている。
新幹線の札幌開業や冬季オリンピック・パラリンピックの招致を契機とした再開発が進んでいる今こそ、官民が連携して都心部の交通課題を解決すべきと指摘。公共交通利用の促進に向けた都心部のまちづくりについて、どのように取り組むのかとただした。
秋元市長は、公共交通機関の待ち合いにも使える屋内広場の整備や、バリアフリー動線の確保を促進するほか、地下鉄南北線さっぽろ駅のホーム増設や札幌駅バスターミナルの再整備を進めているとし、交通基盤の整備を通じて、都心部で人と環境を重視した交通環境の創出を官民連携で進めるとの考えを示した。
子どもの権利擁護
最適な援助方針を確立
一時保護期間の長期化解消
子どもの権利擁護では、虐待などで保護された子どもの一時保護期間の長期化解消についてただした。
札幌市は一時保護に対応するため、昨年11月から仮設の一時保護所を開設。また、民間が運営する一時保護専用施設の定員を拡充しているものの、1人の平均在所日数は35日となっている。
、保護された子どもにとって、一時保護期間中、精神的に安心して過ごせる環境整備が重要と指摘。その上で、一時保護期間の長期化解消をどう進めていくのかとただした。
町田副市長は「外部専門機関による第三者評価を本年中に受け、その指摘を踏まえて、一時保護中の子どもの意見もくみ取る仕組みを導入する。最適な援助方針を確立し、退所後の安定した生活につなげる取り組みを進めていく」と答えた。
更生保護に関わる取り組み
地域団体等との連携を
社会復帰への自立を支援
法務省の再犯罪防止推進白書によると、出所受刑者全体の2年以内の再入所する人の割合は低下傾向にあるが、満期釈放等による出所受刑者の中で再入所する人の割合は、仮釈放による出所受刑者よりも高い状態で推移している。
犯罪をした人や非行のある人たちの再犯を防ぎ、社会復帰に向けた自立を支援する更生保護に関わる取り組みについて質問した。
「再犯の防止等の推進に関する法律」では、地方公共団体は「地方再犯防止推進計画」を定めるよう努めなければならないと明記。既に20政令市中、18市で策定されているが、札幌市は未策定となっている。
刑務所出所者の複雑化した課題に対応し、立ち直りを支える社会を実現するためには、他団体との連携や社会資源等の活用が重要と指摘。石川副市長は、今後策定する防止計画について、「地域団体との連携など具体的な施策を定め、更生保護の推進に向けて取り組む」と答えた。
子ども医療費助成制度
早急に対象拡大を
「他政令市との差」広がる
子ども医療費助成制度の対象を拡大するよう求めた。
同制度は子育て世帯の経済的負担軽減の観点から、子ども・子育て施策の中でも重要度が高い。市は21年度から子ども医療費の助成対象を小学6年生まで引き上げたものの、他の政令市を見ると、中学3年生、または高校3年生までを助成対象とする自治体が増えている。
「人口減少の緩和は喫緊の課題。子育て施策の充実が必要であり、特に子どもの健康を支える施策の充実については、早急に検討し取り組むべき」と提起した。
町田副市長は同制度の対象拡大について、「多額の財源を要することから、事業の持続可能性のほか、政令市の状況や他の医療費助成制度とのバランスなどを勘案しながら検討する」とした。
男女共同参画
意識改革が最重要
ジェンダー平等実現を
石川副市長は、「第5次男女共同参画さっぽろプラン」の策定にあたり、ジェンダー平等に向けた意識改革が最重要との認識に立ち、コロナ禍で顕在化した、女性への深刻な課題の対応など、さまざまな視点から検討を行い、男女共同参画社会の実現を目指していくとした。
市が昨年実施した市民調査では「男性は仕事、女性は家事や育児」という考え方に反対する人の割合が調査開始以来初めて5割を超えたものの、男性に限ると半分に満たない。また、男女平等であると感じる人は、家庭生活では約3割、職場では約2割と非常に低い結果となっている。
市は4次プランの改定に向けて、今年10月に男女共同参画審議会から答申を受けた。5次プランは来年3月に策定される予定。
障がい者施策
情報アクセシビリティ
庁内で合理的配慮の事例を共有
障がい者施策では、今年5月に施行された「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」を踏まえ、当事者のニーズを全庁で共有しながら、事業者・市民への普及啓発などの施策を進めることが重要と指摘。情報アクセシビリティに係る施策をどのように進めていくのかと質問した。
町田副市長は、障がい者の意見を参考としながら、庁内で合理的配慮に係る好事例を共有するとともに、市民理解の一層の促進を図り、情報の取得やコミュニケーションがしやすい環境づくりを進めていくとした。
たけのうち市議は、障がい者が、あらゆる分野の活動に参加するためには、情報を十分に取得、利用し、円滑に意思疎通ができる、情報アクセシビリティが極めて重要と訴えた。
環境施策
太陽光発電に注力
集合住宅も補助対象に
電力市場で厳しい状況の長期化が見込まれる中、たけのうち市議は、自家消費型太陽光発電に力を注ぐべきと提案。秋元市長は太陽光発電設備を導入する企業や集合住宅向けに補助制度を設ける考えを示した。
国の固定価格買い取り制度を活用しない自家消費型の設備を対象とし、本定例会に関連事業費を計上した本年度一般会計補正予算案を提出。可決後(10月6日可決済)に補助制度の運用を開始する。
自家消費型の太陽光発電は、既に211の市有施設で導入。現在、1,800以上ある全施設を対象として導入に向けた調査を行っており、秋元市長は「可能な施設から順次、設置を進める」と述べた。
札幌市議会第3回定例会【本会議】
物価高騰対策255億円
低所得世帯への支援強化
国の給付金に1万円上乗せ
第3回定例市議会は10月6日、物価高騰対策として低所得世帯への給付金を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案や、来年4月1日を施行日とする「未来へつなぐ町内会ささえあい条例案」など、議案18件を可決した。
一般会計の補正予算案は、9月21日提案分280億5,200万円(議案第8号)と30日提案分255億700万円(議案第30号)の2本。補正後の総額は1兆3,102億8,300万円となる。
議案第8号では、オミクロン株に対応したワクチン接種費用に197億200万円を計上。大雪に対応するための「フェーズ1」対策費として34億2,300万円を確保した。
議案第30号は、恩村市議の物価高騰などへの対応を求める代表質問の答弁を踏まえ、秋元市長が30日の本会議に追加提案した。国の低所得世帯に対する1世帯当たり5万円の給付に加え、市独自の取り組みとして1万円を上乗せし、計6万円を支給する。249億7千万円を計上した。対象は住民税非課税世帯(約35万世帯)と家計が急変した世帯(約4万世帯)。年内の支給開始を想定している。
また、生活就労支援センター「ステップ」と関係機関の連携による「生活サポート総合相談会」の開催経費として1,800万円を追加。市内3会場で年内に各1回の開催を予定し、生活困窮者の相談や食料配布などを行う。このほか、食材価格が高騰している状況を受け、子ども食堂や福祉施設に対する食材費の補助に5億1,900万円を確保した。