令和3年 第1回定例市議会代表質問

令和3年第1回定例市議会代表質問

 第1回定例市議会は2月24日から3日間、本会議で代表質問を行い、市政全般について、札幌市の考えをただした。

財政運営

喫緊の課題に対応 

「新たな日常」推進枠を創設 

 民主市民連合は、新型コロナウイルス感染症への対応にあたっては、国の財政支援を待たず財政調整基金を活用すべきと提案してきた。これまでの市のコロナ対策に伴う財政出動を評価した上で「感染拡大や今後の経済状況を注視しつつ、必要な財政出動は遅滞なく行うという難しい判断を迫られる」と指摘し、今後の財政運営について見解を求めた。
秋元市長は、市税の大幅な減収が見込まれる中、感染症で浮き彫りとなった喫緊の課題に対応するため、「新たな日常」推進枠を創設し、これまで計画化していない事業にも取り組む考えを示した。一方、今後も感染症の流行が続く場合には、感染症対策や経済対策を行うための財源が必要となることから、国に財政措置を要望しつつ、必要な対策に取り組みながら「選択と集中」によるバランスの取れた運営により、財政の健全性の維持に努めるとした。

市制100周年を迎えたまちづくり

札幌を象徴する拠点に

「創世1・1・1区」

 「高齢化をはじめとした人口動態の影響を受けるため、大きな変化を見据えたまちづくりの重要性が増す」と指摘。市制施行100周年を迎える2022年度を開始年度とする10年計画「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」では、人口構造の変化を見据え、「どのようなまちづくりを進めるのか」とただした。

 秋元市長は、誰もが生涯にわたり健康を維持し活躍できる環境づくりやバリアフリー化の推進、ICT(情報通信技術)を活用した日常生活の利便性向上などが必要になるとの認識を示し、「市民が明るい未来を描くことができるような、新たな時代のまちづくりの基本指針となるよう検討を進める」と説明。大通と創成川が交差するまちづくりゾーン「創世1・1・1区」については、大通公園と沿道地区の一体的な街並みの形成や新たなオープンスペースの創出など、長期的な視点から札幌を象徴する拠点を実現していくとの考えを示した。

新型コロナウイルスワクチン

接種体制を構築

医療従事者に配慮を

 厚生労働省は新型コロナウイルスワクチンの接種に向けて昨年12月以降、自治体向けの説明会を3回開催しているものの、そこで示される情報は未確定なものが多く、各自治体は対応に苦慮している。市は、さまざまなことを想定し、問い合わせ窓口となるコールセンターを2月1日に開設したほか、接種履歴管理用のシステム開発に着手し、また接種券送付に向けた準備を進めている。

 「ワクチン不足も指摘されているが、接種作業を担当する医療従事者が不足した場合、全体の接種スケジュールも遅れる」と懸念を示し、ワクチン接種に関わる医療従事者に配慮すべきと提言した。

 秋元市長は、市が専用のワクチン配送センターを設け、ワクチン管理業務を市が担うことで、医療従事者が行う業務を軽減できるよう検討していると答弁。また、札幌市医師会などともさらなる負担軽減について検討を進め、医療従事者が接種に協力できる体制を構築するとした。

大規模災害の発生に備えた対応

業務執行体制を確保

「応援者受入計画」見直しを検討

 大規模災害に備え、応援が必要となる業務内容などを定めた「応援者受入計画」について質問した。

 大規模災害が発生した場合、人材や資機材等の業務資源の不足を他自治体や民間から補い、業務執行体制を確保する必要がある。市では、応援者受入体制の調整や情報共有を円滑に実施することを目的として、16年度に「応援者受入計画」を策定し、応援受入体制等の確保に努めている。

 秋元市長は、胆振東部地震の教訓や地震被害想定の見直し結果を踏まえ、地域防災計画の修正を行う考えを示すとともに、関連計画となる「応援者受入計画」についても避難所での被災者対応やライフラインの復旧などの点から見直しの検討を進めると答えた。さらに水害などに備え、今年度末に完成する新たな防災支援システムで集めた情報を「さっぽろ防災ポータル」という名称のホームページに集約し、6月中にリアルタイムで市民に発信できるようにすると述べた。

子育て支援体制の強化

不安抱える家庭を訪問

子育て経験者がサポート

 町田副市長は、子育て家庭が抱えるニーズが多様化していることから、「重層的な支援体制を構築することが重要だ」と強調。来年度から子育てサロンを運営する団体と連携し、育児への不安や孤立感を感じている子育て家庭などに、地域の子育て経験者が家庭訪問しサポートする取り組みを試行実施する考えを示した。
また、困りごとを抱えた子どもや家庭を必要な支援につなげる「子どもコーディネーター」を全ての地域に拡充し、「今後も支援の充実に取り組んでいく」と答えた。
2019年6月に発生した女児死亡事案を受け、「市子ども・子育て会議児童福祉部会」が再発防止に向けて提出した検証結果では、身近な生活圏を単位とした支援体制の強化が提言されている。
児童虐待防止の観点からも、子育てをする保護者、子どもを地域全体で支える、きめ細やかな取り組みが今こそ必要だと求めた。

高齢者施策

災害・感染症に対応 

BCP策定100%目指す 

 新型コロナ感染症拡大に伴い、全国の介護施設等でクラスターが発生。国は今回の介護報酬改定で全ての介護サービス事業者を対象に業務継続に向けた計画の策定、研修や訓練の実施などを義務付け、報酬の改善を行った。
町田副市長は、次期高齢者支援計画案で、災害及び感染症に対応する事業継続計画(BCP)を策定した介護施設などの割合が2022年度に100%となるよう目標値を設定したと説明。今後、国が作成した業務継続ガイドラインや市主催の研修を実施するなど、介護事業者に対し、早期の計画策定や研修の実施を促していく考えを示した。
また次期計画案では、家族介護者支援を重点施策の一つとして位置付け、家族や知人の介護、看病などを無償で行うケアラーのニーズに沿った取り組みを進めると答えた。

子どもを性被害から守る取り組み

被害根絶へ取組強化 

子どもの声をすくい上げる 

 「子どもを性被害から守ることは大人の責務」とし、子どもの性被害根絶に向けた取り組みを強化するよう提言した。
市教育委員会は、28年前に当時の教え子であった女性にわいせつ行為を行ったとして、男性教員を懲戒免職処分にした。長谷川教育長は昨年12月、東京高裁が性的被害を認定する判決を出したことを受けて、当事者の女性に対し、わいせつ行為を受けたことや寄り添った対応ができなかったことを謝罪するとともに、子どもの性被害を根絶するという強い意志のもと、全職員への指導を徹底するとのコメントを出した。
長谷川教育長は、子どもの場合、誰にも被害を打ち明けられないこともあることから、そうした声をすくい上げる仕組みづくりを進めると答弁。また、被害者支援に携わるNPO法人などと連携を図り、子どもを性被害から守る取り組みを強化していくとした。

児童相談体制の法定対応力強化

常勤弁護士を配置 

法的判断要する案件に対応 

 複雑な法的要因が絡み合う児童虐待への対応として「弁護士の常勤配置を含む、児童相談所(児相)の法的対応力の強化が喫緊の課題」と指摘したのに対し、秋元市長は「難しい法的対応が求められる事例が増加している」と述べ、21年度から弁護士を任期付職員として採用し、常勤職員として児相に配置すると説明。一貫した法的支援体制を確保するほか、職員への日常的な法律相談や研修も充実させることで、「組織全体の法的対応力の強化を図る」と答えた。
国は2016年、児童福祉法を改正し、「児相での弁護士の配置又はこれに準ずる配置」を行うことが規定され、弁護士の配置が義務化。田島市議は、専門的知見に基づいたサポートや警察・裁判所への対応に加え、「複数の行政機関に関わる案件を整理し、職員に対して適切なアドバイスを行うことも(弁護士に)期待されている。果たす役割は大きい」と訴えた。

新幹線トンネル掘削土

「しっかりと説明を」

対策土の受け入れ候補地

 秋元市長は、北海道新幹線札樽トンネル工事で発生する重金属などを含む「対策土」の受け入れ候補地の早期確保に向け、「鉄道・運輸機構や関係機関と連携し全力で取り組む」と答弁。候補地選定の遅れに伴い、「工事の遅れを懸念する声もある」との指摘に対しては、星置と富丘の2工区で着工が1年半以上遅れ、「工程管理上、厳しい状況にあると機構から聞いている」と報告した。
 札幌市は、手稲山口地区のごみ処理場予定地を「対策土」の受け入れ地として転用することを検討し、昨年、住民説明会やオープンハウス(説明付パネル展)を複数回開催。田島市議は、対策土に関する地域住民の不安を解消するためにも、「対策方法を示し、しっかりと説明する必要がある」と求めた。秋元市長は「具体的な対策方法が決まり次第、住民説明会や議会の場はもとより、オープンハウスなどを通じて、丁寧に説明を尽くしていく」と答えた。

新たな動物愛護センターの整備

親しみやすい空間を

動物愛護への関心高める

 多くの人たちに動物愛護への関心を持ってもらうためにも、21年度に実施設計を予定する動物愛護センターは、市民に親しみやすい空間として整備し、加えて動物愛護団体をはじめ、多くの市民が利用しやすい環境を整えるべきと提案した。
 町田副市長は、人と動物にぬくもりのある親しみやすい空間を提供するため木造の建物とし、市有施設として初めてエネルギー消費量を従来より削減した建物、いわゆるZEB(ゼブ)を目指すと説明。動物愛護の拠点として多くの市民・動物関係団体が相互に連携し活動できるよう、今後も意見を取り入れながら検討・整備するとの考えを示した。
 2018年10月、市内の動物愛護5団体による「動物愛護センター新設市民連合応援団」が結成され、「新たな動物愛護施設ができた際、活動のスペースがあれば、動物愛護にかかわる活動を市民協働で行いたい」と表明。田島市議は「心強い」と強調した。

白旗山都市環境林の今後の活用

森林施策の拠点に

「より一層の利活用図る」

 都市近郊林の保全・活用を目的として主に市街化調整区域の民有林を公有化した「都市環境林」(市内37カ所、計1,736ヘクタール)のうち、清田区有明に位置する「白旗山都市環境林」(1,061ヘクタール)について、吉岡副市長は、新たな役割を発揮する場として「最もふさわしい」と強調。新たに利活用計画を策定し、計画的な森林整備やふれあいセンターの多機能化など、国から配分される森林環境譲与税を活用しながら、森林施策の拠点として「より一層の利活用を図る」との考えを示した。
 札幌市は白旗山都市環境林環境基本計画を策定(1984年)して以降、森林や、自然観察、森林浴を楽しめる区域、クロスカントリースキーのコースを整備し、加えて「ふれあいセンター」を中心にレクリエーションの場としても活用。一方、樹齢50~70年のカラマツ林を早急に間伐する必要があるほか、同センターや散策路の老朽化が進行し、利用者数も年々減少している。
 公益的機能を発揮する場として、(白旗山都市環境林を)より活用していくべきと求めた。

市内観光事業者への支援

状況見極め実施 

宿泊促進キャンペーン 

 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、「外出自粛や旅行需要の減少など、観光業界は深刻な打撃を受け、不安の声が寄せられている」と指摘。延期となった宿泊促進キャンペーンの開始見通しも立たない中、「観光事業者への支援をどのように考えているのか」と質問した。
石川副市長は、1定補正で宿泊関連団体が行うイベントや宿泊クーポンの発行などに必要な経費を計上したとし、「今後も市内観光事業者の経営状況も注視しながら対策を講じていきたい」と表明。宿泊促進キャンペーンについては、進学や就職、転勤など、人の移動が多くなる時期を控え、「積極的に誘客を促す取り組みは慎重にすべき」とした上で、今後の感染状況や市内の入込状況、国や道の誘客支援策の動向などを見極めながら機動的に実施すると答えた。

市内展示機能の強化

基本計画を策定 

アクセスサッポロに替わる展示場 

 道立産業共進会場(月寒グリーンドーム)が閉館し、「展示会に特化した施設は現状、アクセスサッポロに追随できる施設は見当たらない。札幌市の展示機能は、同等の都市規模を有する他都市と比べて見劣りしている」と指摘。石川副市長は、アクセスサッポロに替わる展示場について、施設規模や機能、整備手法などをまとめた基本計画を来年度策定し、整備に向けて具体的な検討を進める考えを示した。
 新型コロナの感染拡大に伴い、オンラインを活用した非対面・非接触での開催が広がる一方、その場合、「新商品と偶発的に出会う機会が少ない」「商談が思うように進まない」といった課題が浮き彫りになりつつある。
 「商談は、直接商品を見る、触れる、人と人との対面が基本。(対面式の)展示会の重要性を改めて認識した」と述べ、北海道・札幌の経済活性化に向け、市内の展示機能を強化するよう求めた。

新琴似市民運動広場

「ラグビー熱を生かすべき」 

地域の声も聞きながら検討 

 2019年ラグビーW杯を通じて盛り上がった“ラグビー熱”を今後生かすべきと強調。「地元でも要望の声もある、子どもたちを含め、ラグビーが体験できる広場の実現を」と述べた上で、新琴似市民運動広場整備の方向性を質問した。石川副市長は「議員の提案を踏まえ、幅広い年齢層に楽しんでいただける広場の実現に向け、地域の声も聞きながら検討を進める」と答えた。
 札幌市はごみ埋立地として利用されていた新琴似地区にある市有地を市民運動広場として整備する方針。検討を進める中で、地盤が軟弱で土地の沈下量が数十センチに及ぶ可能性や、敷地外で一時的に環境基準を超える汚染物質が観測されるなどの課題が判明したため、試験的に盛り土を行い、地盤や地下水の変化を観測するなどの取り組みを進めてきた。
 石川副市長は、現時点の調査・検討結果について、盛り土した際の地盤の沈下量は想定(50センチ程度)の半分以下となる20㌢程度にとどまっていると説明。専門家委員会では、試験盛り土による影響は見られないことから、広場整備を進めても問題ないとの見解が示されたと報告した。