令和2年第2回定例市議会報告
オール札幌で苦境乗り越える

第2回定例市議会は6月3日、代表質問が行われ、民主市民連合が登壇した。冒頭、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方に対して哀悼の意を示すとともに、感染症対策との闘いの最前線で尽力している医療従事者などに対し感謝の意を表明。また、社会・経済活動の再開に向け、「直視すべき課題は山積している。状況は厳しいが、オール札幌で取り組んでいく」と述べた後、11項目にわたって質問した。
財源を捻出
予算組替を検討
新型コロナウイルス感染症への対応が求められている中、未執行事業の予算組み替えや計画の抜本的見直しなど、財源を捻出する工夫が求められると指摘。緊急性を伴わない事業については、減額補正を含め、その財源を新型コロナ対策に充てるなどの取り組みが必要とし、今年度の予算執行に対する認識についてただした。
秋元市長は、実施する見込みのない事業や、休止や時期の見直しが可能な事業について、減額補正も含めた予算の組み替えを検討する必要があると答えた。
市は、新型コロナ対策を柱とする過去3回の補正予算の財源として、計73億円の財政調整基金を取り崩し、20年度末の基金残高は101億円となる見通し。中期計画「アクションプラン2019」では、22年度末の基金残高について、100億円以上の水準を維持するとしている。
秋元市長は、市税収入の落ち込みが懸念される中、災害や大雪といった不測の事態への備えとして、「基金は一定程度の残高を確保していかなければならない」との認識を示した。
災害時の情報伝達
地域への情報は迅速に
新防災支援システムを活用
災害が発生した場合、地域の被害状況やインフラ復旧、災害情報をいち早く伝えることが住民の安堵感や町内会の自主防災組織の活動に役立つと強調。市が現在構築を進めている新防災支援システムに期待を寄せた上で、「地域で発生している災害情報の伝達をどう改善するのか」とただした。
秋元市長は、新防災支援システムの活用によって、今後地域の災害発生状況を一括して収集することができることから、まちづくりセンターや、災害時の放送に関する協定を締結しているコミュニティFM局を通じて地域へ迅速に伝達することが可能になるとの考えを示した。
市は現在、気象や河川水位の情報を監視する機能や、複数の媒体へ一括発信できる機能を施した新防災支援システムの構築を進めている。
地域の防災意識向上
モデル地区の事例集を作成
地区住民らが行う自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が創設され、市はこれまで10地区をモデル地区として選定し、計画の作成を支援。これに関し、村上市議は「計画策定後も市が支援を行うことで、防災力や防災意識のさらなる向上が図られる」と指摘。「計画の取り組みをより充実・発展させ、地域の防災意識を向上させていくために地域にどう関わっていくのか」とただした。
秋元市長は、先行地区の互いの取り組みを共有するためのフォーラムや講演会を開催するほか、地域が実施する防災訓練の支援を行うと答弁。また、モデル地区の活動を紹介する事例集を作成するなど、地区防災計画の取り組みを広げていきたいと答えた。
また、迅速に災害情報を集約・発信できるシステムを構築し、気象や河川水位の情報を監視する機能や、複数の媒体へ一括して情報発信できる機能を導入するとした。
新しい避難所の考え方を発信
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、市の避難所運営マニュアルを改定するよう求めた。
現在の避難所運営マニュアルは、インフルエンザなど既存の感染症を想定。国が4月に各自治体へ発出した「避難所における新型コロナウイルス感染症へのさらなる対応について」では、避難所での過密状態を防ぐため、▽可能な限り多くの避難所の開設▽親戚や友人宅への避難の検討─などが示されている。
国の通知による対応は、これまで市民に周知してきた内容と大きく異なることから、「新しい避難所の考え方を発信し、自らの命を守る適切な行動について理解を深めてもらうことが必要」と指摘。秋元市長は、「避難者に対して基本的な対策を周知することが重要」と述べ、災害や被害の状況によっては、自宅にとどまっていただく場合もあることなど、広報さっぽろやホームページで広く周知していきたいとした。
障がい者に配慮を
4月から、市長記者会見の手話付き動画配信や同時手話通訳を導入したことを評価した上で、市の情報提供にあたっては、引き続き「合理的配慮」を検討すべきと提言。また、市民や企業に対する障がい者への配慮についても、「より一層、理解を深めてもらうための努力を続けるべき」と求めた。
秋元市長は、ICT(情報通信技術)を積極的に活用し、情報発信の強化に努めるとともに、個々の障がい特性や適切な配慮について市民の理解をより一層深め、障がい者がコミュニケーションしやすい環境を醸成していきたいと答えた。
市は17年度、障がい者コミュニケーション条例と手話言語条例を制定し、障がいの特性に応じた多様なコミュニケーション手段の環境整備を進めている。うるしはら市議は、市長記者会見については、リアルタイム字幕のライブ配信を導入すべきと提案した。
新型コロナ対応
医療現場への支援
病院収入も大幅減
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療機関では受診者が減少し、経営に極めて深刻な影響を及ぼしているほか、感染者を受け入れている病院では、医療従事者の確保と配置に多大な負担がかかっている。
秋元市長は、「厳しい状況の中、医療従事者の献身的な対応により、札幌市の医療提供体制を支えていただいていることに大変感謝している」と述べ、新型コロナウイルス感染症の対応にあたる医療従事者に対し、答弁の中で感謝の意を表した。
その上で、緊急対策第3弾として、感染が疑われる患者の入院受け入れに対する補助や、民間医療機関に対する体制整備の協力金に係る経費を計上し、「支援の拡充を提案している」と説明。個人防護服についても、市が調達し提供することで、医療従事者が安心して働けるよう環境整備を支援するとした上で、「今後も、医療従事者が必要としている支援が行き渡るように、国に対してさらなる財政的支援を要請するなど、全力を尽くし、医療の現場を支える」と強調した。
新型コロナウイルスの集団感染が発生した介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」に関し、「緊急時の派遣チームを構築する仕組みがなかったことから、早期の対応の遅れを招き、感染拡大につながったことは大きな教訓であり、早急に対応しなければならない重要な課題だ」と指摘。アカシアハイツでの経験を踏まえ、「介護施設での集団感染に対して、どのような対応を行うのか」とただした。これに対し、「今後に備え、医療と介護の両方が必要な高齢者に対応できる体制の整備について早急に取り組みたい」と答えた。
児童虐待防止
要対協を核に
子ども見守る体制を拡充
2歳女児の尊い命が奪われるという痛ましい事件から1年が経過しようとしている中、秋元市長は、職員の意識改革をはじめ、専門性の強化や複数の目で見守るための関係機関を含めた支援体制を強化し、子どもの虐待防止対策を徹底していくとの決意を示した。
本市の児童虐待通告状況は、2月が前年比2.3%増の131件、3月が51%増の157件、4月が25.6%増の147件と、いずれも前年より増加している。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、支援ニーズの高い子どもや家庭との面談、人的資源の投入に一定の制約を受けているとし、「関係各所との連携をより緊密にしなければならない」と指摘。資源投入が制約された中でも、要保護児童対策地域協議会(要対協)を核とした取り組みを進めるべきとし、見解を求めた。
秋元市長は、子育て支援やまちづくりを行う団体とのネットワークを生かして子どもを見守る体制を拡充するなど、地域と連携した取り組みを進めるとともに、要対協の事務局となる区の組織体制を充実し、一層の機能強化を図っていく考えを示した。
教員の長時間労働の解消
抜本的解決を求める
指針に基づき取り組みを推進
市教育委員会は、長時間労働を解消する取り組みとして、外部人材の活用や勤務時間を把握する出退勤システムの構築などを行ってきた。しかし、市が昨年実施した教員の時間外勤務の調査結果では、小学校と中学校で半数以上の教員が月45時間を超える時間外勤務を行っているとの結果が出た。
こうした中、市は外部の客観的な視点から業務を分析するため、モデル校を指定し、民間コンサルタントに業務委託を行った。コンサルタントは、職員へのアンケートやヒアリングを通じて、「慣例化された各種行事による負担」「学校内の他の職種や外部人材による教員へのサポート体制の不足」などを提言している。
長谷川教育長は、コンサルタントの提言や学校現場の声を受けて、学校業務の大幅な見直しや、教員のサポート体制強化を柱とした働き方改革に向けて指針を策定していると答弁。これに加え、コロナウイルス感染症に伴う臨時休業により、既存業務の再構築や働き方の見直しを迫られているとし、「指針に基づいた取り組みを進め、長時間労働の解消を加速させていく」と答えた。
保育人材の確保
市独自の手当を
さらなる離職を懸念
新型コロナウイルスが拡大する中での保育業務によって保育士の負担が増加し、さらなる離職につながるのではないかと危惧しているとして、「市独自の手当を講じることが今こそ必要だ」とし、見解を求めた。
町田副市長は、人材の確保にあたっては、①就業継続の支援②新たな担い手確保といった観点での取り組みが重要だと説明。①では、保育士の勤務実態や現場のニーズに関する調査を行うとともに、保育士として一定の期間を勤続した人に給付する一時金給付事業等の効果を検証するなど、必要な対応を速やかに検討し、②では、一定の要件を満たせば返還免除となる保育士修学資金等貸付事業のさらなる周知と併せ、保育士養成校や関係機関との連携強化を図っていきたいと答えた。
保育人材の確保に向け、市は、潜在保育士の掘り起こしや次世代の育成など、各種施策を実施。しかし、市の保育士実態調査(18年度)では、有資格者のうち、現在保育士として働いている割合は49%にとどまっている。
文化芸術事業の推進
早急に独自策を
国の制度活用し積極的支援
コロナウイルスの影響で文化芸術団体などに大きな影響が出ている。第2回臨時市議会では、個人を含む地元文化団体が市内で無観客公演などを開催し、インターネットを配信する事業に対して補助する枠組みをつくった。
こうした取り組みに一定の評価をしながら「感染症が終息に向かうまでは、イベントの中止に伴うチケット代の払い戻しや人件費などが負担になることから、文化芸術の担い手が失われる恐れがある」とし、国からの支援も活用しつつ、早急に独自の支援策を講じるべきと求めた。
石川副市長は、「活動の場が少なくなっている地元の文化芸術団体などへの支援が必要と考え、映像配信の補助事業を早期に立ち上げた。今後も国の制度を活用しながら積極的な支援に取り組む」との考えを示した。
また、感染症による影響を見極めながら、予防策をまとめたガイドラインに沿って文化芸術事業を実施するほか、PMFの修了生によるコンサートやイベントの開催も検討していると答えた。
休校に伴う学習支援
放課後補習など
子どもの実態に応じた支援
休校に伴う学習支援などについてただした。
市内の小中学校はコロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、2月28日から一斉休校の措置をとった。4月14日からは再開して1週間という時期だったが、再び一斉休校を実施し、さらに緊急事態宣言の期間が5月31日まで延長されたことを受け、臨時休業の期間を延長した。
一斉休校について「子どもたちはもちろん、保護者や教職員なども不安を抱えている」と述べた上で、臨時休業による学習の遅れにどのように対応していくのか、見解を求めた。
長谷川教育長は、夏休み期間中に一定程度の授業日を確保するとともに、放課後に外部人材を活用した補習を行う体制を整備するなど、子ども一人ひとりの実態に応じた学習支援を図るとした。
また、今回の臨時休業の対応を進める中で、ICTの活用は、学校や家庭での学習を支援する上で有効との認識を示し、教員のICTスキルの向上を進め、緊急時でも学びを止めることのない体制づくりに努めていくと答えた。
ケアラー・ヤングケアラー支援
実態調査実施へ
介護者を地域で支える
障がいや病気、医療的ケアを必要とする家族や身近な人の介護、看護、療育など、支援を必要とする人を無償でケアする「ケアラー」への支援を求めた。
総務省の「2016年社会生活基本調査」によると、ケアラーは約700万人に上っており、介護をしながら日常生活を送れるように、ケアラーを社会全体で支えていくことが急務となっている。
市として各種介護サービスや、要介護・要支援高齢者の家族への支援に取り組んでいるものの、ケアラーへの具体的支援は不足しているとし、支援の充実を求めた。
町田副市長は、介護者を孤立させることのないよう、各支援機関の連携強化や、介護者を地域で支える意識醸成などに取り組むと答弁。また、子どもたちが介護者となっているヤングケアラーについて、「登校できないなどの困難を抱える子どもたちの中には、家族の介護や家事負担などがあるケースもあり、関係部局が連携し、ヤングケアラーの課題認識をより一層深めるとともに、その実態の調査を行い、困難を抱える子どもたちの適切な支援に努める」と答えた。
指定管理者制度での雇用維持
非正規労働者の雇用維持を
公共サービスを支える人材守れ
コロナウイルスの感染拡大に伴う経済の悪化は、労働者にも大きな影響を与えた。特に派遣社員や契約社員などの非正規労働者を中心に解雇や雇い止めが広がるなど、雇用環境は厳しさを増している。市の指定管理施設は、全429施設のうち283施設が休館。そこで働く非正規職員のうち約550人が一定期間の休業、自宅待機を余儀なくされた。
「我が会派はこれまでも指定管理者制度や業務委託にあたっては、公共サービスを支える事業者や非正規労働者の雇用環境を守る対策を求めてきた」とし、あらためて指定管理施設に従事する労働者の雇用を守る対策を講じるよう求めた。
町田副市長は、「各指定管理者との協定書に基づき、施設の安定運営に必要な対応を行ってきたが、これからも国や市の各種支援策を周知するとともに、雇用維持への配慮を重ねて依頼していく」とした。
障がい福祉サービス事業所等への支援
障がい者の命守る事業者に寄り添った支援を
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、障がいや介護、福祉現場での物資不足、さらには訪問介護を利用する本人の家族が感染した場合に濃厚接触者となる利用者本人へのサービス提供体制が課題だと指摘。障がい者の命と生活を守るために、事業者による障がい福祉サービスを継続する必要があると述べた上で、市としても各事業者に寄り添いつつ、支えることが重要だと求めた。
町田副市長は、これまでマスクや消毒用エタノールなどの衛生用品の確保に努めるとともに、感染の疑いのある人への障がい福祉サービスの提供について、「関係する事業者との調整を重ねている」と説明。今後も、感染予防に関する分かりやすい情報提供をはじめ、感染の疑いのある人が発生した場合でも、事業者が安心して障がい福祉サービスを継続できるよう、感染症対策の専門家の協力をいただくなど、感染拡大防止のための必要な支援に取り組んでいきたいと答えた。
また、この質問に対する答弁の冒頭、障がい福祉サービスを提供する事業者に対し、「感染予防を徹底しながら、サービスの継続的な提供に尽力いただいており、感謝申し上げる」と述べた。