令和2年第1回定例市議会【代表質問】

子育て支援など重点

 第1回定例市議会は2月25日、本会議を再開し、民主市民連合が代表質問を行った。2020年度予算案に関し、秋元市長は、都市の強靱化や子育て支援の充実、産業人材の育成や観光施策を積極的に計上したほか、東京2020大会の成功と、30年冬季オリンピック・パラリンピックの招致に向けた取り組みを進めていくと答えた。

財政運営

健やかに育つ街に

子ども予算6年連続で増

 秋元市長就任以来、子ども関連予算額は6年連続で増額し、20年度は1,971億円(15年度比41.6%増)を確保した。村上市議は「女性の活躍を応援し、子どもが健やかに育つまちの実現に向け、これまでの取り組みを前に進めようとする姿勢が見て取れる」と強調。また、予算編成にあたり、民主会派として子育て支援の充実や若者の雇用促進・定着策を求めてきたと主張した。

 秋元市長は、子ども医療費助成や第2子保育料無償化の対象拡大による子育て世帯の負担軽減のほか、第二児童相談所の整備に向けた取り組みなど、子どもの見守り体制を強化すると説明。また、若者の地元就職を増やすため、中小企業を対象としたインターンシップ(就業体験)を開催し、地元定着を促すための奨学金返還支援にも着手すると答えた。

第2期さっぽろ未来創生プラン(案)

収入への不安軽減を

若者の地元定着も促進

 市の人口減少対策計画「第2期さっぽろ未来創生プラン(案)」では、本市の合計特殊出生率(2018年1.14)が低い要因の一つに全国よりも高い未婚率が挙げられていると指摘。男女ともに、結婚するとした場合の障害は「結婚後の生活を維持していくための資金」が最も多い(18年調査)として、収入への不安を軽減する取り組みが必要だと求めた。また、道外転出を抑制する上で道内市町村との広域的な連携が効果的だと提起した。

 秋元市長は、第2期プランでは、質の高い雇用を生み出す産業の育成や奨学金の返還支援、子ども医療費助成の拡充など、所得への不安や子育て世代の家計負担を軽減する取り組みを強化すると答弁。また、さっぽろ圏域での若者の地元定着や首都圏からの人材環流、札幌市民と道内市町村をつなぐ関係人口を創出し、道や道内市町村と連携を深めながら、道内にとどめる役割を果たしていくとした。

防災施策

地域の防災意識向上

モデル地区の事例集を作成

 地区住民らが行う自発的な防災活動に関する「地区防災計画制度」が創設され、市はこれまで10地区をモデル地区として選定し、計画の作成を支援。これに関し、村上市議は「計画策定後も市が支援を行うことで、防災力や防災意識のさらなる向上が図られる」と指摘。「計画の取り組みをより充実・発展させ、地域の防災意識を向上させていくために地域にどう関わっていくのか」とただした。

 秋元市長は、先行地区の互いの取り組みを共有するためのフォーラムや講演会を開催するほか、地域が実施する防災訓練の支援を行うと答弁。また、モデル地区の活動を紹介する事例集を作成するなど、地区防災計画の取り組みを広げていきたいと答えた。

 また、迅速に災害情報を集約・発信できるシステムを構築し、気象や河川水位の情報を監視する機能や、複数の媒体へ一括して情報発信できる機能を導入するとした。

森林環境譲与税

地域材の活用促す

公共建築物を木質化

 国から配分される「森林環境譲与税」を活用して、公共建築物の地域材による木造・木質化を積極的に進めるよう提起。吉岡副市長は、「譲与税の増額を踏まえ、庁内検討を進めている」とし、学校や中央区の保育・子育て支援センター「ちあふる・ちゅうおう」のほか、新MICE施設や中央区役所の新庁舎など、多くの市民が利用する施設で活用する考えを示した。

 森林を適切に管理・保全する「森林環境譲与税」が19年度に創設され、国から自治体に税が配分。譲与額の増額が前倒しされ、市の配分予定額は20年度約2億円、24年度以降は毎年約3億2千万円が配分されると試算されている。

 地域材の利用は、地域活性化や雇用創出につながると提言。また木造建築物は、けがの軽減やインフルエンザの罹患率が低いことなどを紹介し、同譲与税を活用し、地域材の利用を促進していくよう求めた。

感染症対策

市民の不安解消を

新型コロナの対応

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、秋元市長は、市主催のイベントなどを3週間程度、原則中止または延期することを指示したと説明。「引き続き、事態を掌握しながら適時適切に指示を行い、市民が過度に不安になることなく冷静に対処していただけるよう努める」とした。

 市民の不安解消に向けた観点から、①新型コロナウイルス対応支援資金の周知拡大②不安定雇用者への対応について再質問。支援資金については、市のホームページやメールマガジンなどで情報発信をしているが、今後チラシを配布するなどしてさらなる周知を図るとした。不安定雇用者への対応については、「働く人が不利益を被ることがないよう、経済団体などを通じて、事業者にお願いしていく」と述べた。

市職員の人材確保

受験要件の緩和検討

採用試験の受験者減少

 市職員採用試験の受験者数は年々減少し、職員確保が難しくなると見込まれている。人材確保ができても配属されるのは4月に限られるため、年間を通じて傷病や育児休業を理由とした欠員が発生しても年度途中に配置することができない。

村上市議は、受験要件を緩和することや、採用時期に柔軟性を持たせることで受験者数を増やし、有為な人材を確保するよう求めた。

 町田副市長は、民間企業の採用が活発化していることや少子化の影響で、全国的にも公務員採用試験の受験者数が低下していると説明。札幌も低下傾向にあるとの認識を示した上で、受験要件の緩和や採用時期のあり方について検討を進めるとした。

子ども施策

困難抱える子どもを支援

地域とのつながり深める

 子どもの貧困に関する質問に対し、秋元市長は、複合的な課題を抱え、個別の機関や制度だけでは解決が難しいケースが存在していると答弁。子育てや福祉、教育など、関係部局による横断的連携はもとより、地域の支援機関や団体とのつながりをより一層深め、困難を抱える子どもや家庭に必要な支援が行き届くよう、対策を進めていくと述べた。

 ひとり親家庭の子どもの養育費確保についても質問した。養育費を受け取っている母子世帯は約2割に過ぎず、養育費の不払いが子どもの貧困を招くとの指摘がある。

 養育費確保に向けて支援策を打ち出している他都市の事例を紹介し、「ひとり親家庭の支援をどう進めていくのか」とただした。これに対し、国の動きや、他都市の状況を踏まえ、より効果的な支援の在り方を検討していくとした。

多死社会の到来を見据えた施策

火葬場、墓地の対策を

今年度中に基本構想を策定

 団塊の世代をはじめとする人口の多い世代の高齢化による「多死社会」の到来を見据え、市は火葬場や墓地の安定運営と市民の意識醸成を施策の柱とする「(仮称)火葬場・墓地のあり方基本構想」を今年度中に策定する。

 「火葬場や墓地の問題は行政が積極的に取り組んできた課題とは言えない。多死社会の到来を見据えた取り組みが必要」と指摘した。

 町田副市長は、多死社会の到来による火葬場や墓地の問題は、十分な対策を行わなければ深刻になっていくことは避けられないとし、「基本構想に基づく取り組みを進め、市民が安心して暮らしていけるさっぽろを目指す」と答えた。

成年年齢引き下げに伴う成人式のあり方

2022年度以降も「20歳」

成人式の参加対象年齢

 石川副市長は22年度以降の成人式の参加対象を、これまで同様に20歳とすることを明らかにした。

 18年の民法改正に伴い、22年4月1日以降、法律上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられる。

市は22年度に成年となる市内の中学3年、高校1年の生徒や保護者、和装レンタル事業者などの成人式関係者を対象にアンケートを実施。その結果、成年年齢引き上げ後も20歳が望ましいとする意見が多数を占め、地域で成人式を主催している区の成人の日行事実施委員会でも同意見だった。

 石川副市長は18歳の場合、受験や就職を控えた時期と重なることから、これまでと同様「20歳とする方針としたい」と答えた。

給特法の改正

「業務削減」が大前提

教員の長時間労働対策

 昨年12月、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)が一部改正され、長期休業期間中に休日の「まとめ取り」を行うことができる「変形労働時間制」の適用が可能となった。変形労働時間制の導入そのものが、教員の勤務時間を縮減するものではないとの政府見解を説明。これを踏まえ、長時間労働の解決は「業務の削減」が大前提とし、見解を求めた。

 長谷川教育長は、政府見解と同様に学校全体の業務を削減するとともに、長期休業期間中に振替休日を取得しやすい環境を整えることが重要との認識を示し、変形労働時間制の導入の可否について、慎重に検討を行うと答えた。

 また、長時間労働勤務の実態についての分析調査を踏まえ、教員の負担軽減につながる取り組みを推進していくとした。

中小企業の人材不足への対応

生産性向上策を拡充

業務改善のノウハウ提供

 中小企業の人材不足への対応について、市の取り組みをただした。

 札幌市の廃業率は、14~16年にかけて9.4%と人口100万人以上の11政令市の中で大阪、福岡に次いで高く、廃業の要因として後継者と従業員の人材不足がある。生産年齢人口が減少する中、市は産業人材創出推進本部を立ち上げ、各業界へのヒアリングやアンケートを実施し、人材不足に対応するための取り組みに着手している。

 石川副市長は、工場へのIotシステム導入支援の拡大や、業務改善ノウハウの提供など、生産性の向上につながる支援に取り組むと説明。また、雇用のミスマッチ解消に向けて大学生を対象とするインターンシップ支援を新規に行うなど、企業と求職者のマッチングを充実していくとした。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会

魅力感じる機会を創出

30年冬季大会への招致機運醸成

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会について、大会期間中に多くの市民が大会や競技の魅力を感じてもらうための機会創出が重要とし、こうした取り組みが30年冬季オリンピック・パラリンピック招致の機運醸成に寄与すると提言した。

 石川副市長は、誰もが身近に体感してもらえる場の創出が重要だとして、市民が一緒に応援できるパブリックビューイングを市内各所で実施するなど、イベントを数多くつくると答弁。また、大会期間中は「街並みに都市装飾を施し祝祭感や高揚感を高め、市民にとって忘れられない夏とすることで、30年冬季大会の招致機運の醸成につなげていきたい」と述べた。